【感想】 コクリコ坂から

映画、観てきました。
ちょっとレビュー書いてみたいと思います。
公開してもうかなり経ってるので今更感はありますが…。
ネタバレ注意です。
あと、長文注意です。







単刀直入に今作の個人的評価は……『良作』です。



批判的な意見の多い作品のようですが、個人的には好きですね。
好き、というか、惚れたというか…。



原作を読んでいないので、あくまでも映画を観ての感想です。
個人的な意見ですが、この作品は女性には評価がいまひとつ、なんじゃないでしょうか。
女性、と言っても団塊の世代以後に生まれた、若い世代の方々は特に。
その反面、男性は比較的いい印象があったのではないかと思います。



この作品のキーワードに『平和』、『純愛』、『郷愁』があると思います。
時代背景が、朝鮮戦争の後、高度経済成長期の日本(横浜)であることから、戦後、日本が平和になり、これから発展を遂げていく時代が描かれています。
そんな中、坂本九上を向いて歩こうが挿入歌として使われています。
いわゆる古き良き昭和、ですね。



純愛に関しては、一言で言えば韓国ドラマですね。
淡い恋心を抱いていた二人が、相思相愛になったと思ったら、実は血がつながっていたとかいなかったとか…。
でも韓国ドラマのような甘々な感じではなく、そこは昔の学生らしくピュアさ加減がよく表れていたと思います。
今時の学生、ではなく確かにそこにいた海と俊は”当時の”学生だったんです。
相思相愛だってことが分かってからも、お互いの距離をそれとなく保っていたのには、純愛さを強く感じました。



そして最後の郷愁、これがこの作品の肝になっているんじゃないでしょうか。
確かに、当時の盛んな学生運動を彷彿とさせるようなカルチェラタン学生寮)の取り壊しとか、大々的に描かれていますが、それはこの郷愁を飾り付ける装飾品の一部のような気がします。
古き良き昭和、それを表現する為の小道具があちこちに見受けられます。
背景は当然1960年代の横浜の風景ですが、その中に見受けられる自動車、家電、琺瑯看板、洋館等…当時にタイムスリップしたかのような錯覚を抱く程よく作りこまれていたと思います。
清掃前のカルチェラタンには雑然と物が溢れていましたが、よく見ると懐かしいものばかり。
まあ自分が生まれる前の時代なので言うのもあれですが、確かにそこには郷愁がありました。
そして、あとBGMも良かったですね。
作品の雰囲気を壊さない、自然なBGMや懐かしさ漂う選曲。
特にその中でもラストの船に乗り込む前のシーンで流れていた曲がベンチャーズっぽくて好きでした。
ストーリーよりも、キャラよりも何よりも、その舞台設定が一番印象に残る作品だったと思います。



唐突ですが、サントリーの金麦のテレビCM、ご存じでしょうか。
檀れいさんが登場し、オールナイトニッポンのあのテーマ曲の流れるあのCM。
あれは男性視聴者にとっては”郷愁”を感じ、女性視聴者にとっては”反感”を覚えるCMだそうです。
どこか懐かしい音楽に、季節に応じた哀愁を感じさせる背景、そして永遠のマドンナのような存在の檀れいさんの無垢な笑み。
当時、学生だった頃にクラスのマドンナに抱いた恋心、それを想起させるものとなっている。
女性にとってはその男を誘うようなマドンナのわざとらしい態度や仕草が、ぶりっ子を嫌うように嫌悪感を抱くようです。



その感想が、このコクリコ坂からにも繋がるんじゃないかと思います。
あくまでも個人的意見ですが、男の人にとっては胸の奥がうずくような、ちょっとドキドキするような、そんな感想に。
そして女性にとっては郷愁(ノスタルジー)を理解できずに『結局何が言いたかったの?』ってなるのではないかと思います。
確かに物語の盛り上がりに欠けたのは事実ですね。
ジブリにしては珍しく、ファンタジー性が皆無だったのもまた事実。
けれども、この作品は、ファンタジー云々ではなく、郷愁を描いた文学作品だったと思います。
だったらアニメにする必要は無いと思う方もいるかもしれませんが、サザエさんちびまる子ちゃんのような日常を描いたホームアニメもあるように、映画の中でもこういったホームアニメ映画もあっていいと思います。
アニメ化することで出せる味ってのもあるものなので。



郷愁をテーマにした文学作品を、宮崎吾朗監督がアニメ化してコンパクトにまとめた、といった感じの作品でした。



最後に、主人公の海かわいいよ海。
素晴らしくしっかりした中に見せる、少女のか弱さ、女の子らしい仕草はよく表現されていました。
全体のキャストも良かったです。
敢えて有名声優起用するよりも、声優不慣れな人にやってもらった方が、ジブリ作品にはしっくり来てると思います。



ちゃんと作中に『GHIBLI』の文字があったのも、ジブリらしい遊び心で好きです。




以上長々と書きましたが、コクリコ坂からのレビューでした。
読んでいただいてありがとうございました。